ニジオと呼ばれる男は、マサトのＴシャツを自分の胸の上で綺麗に畳んだ。もう一人の男は、部活の後輩の背を偉そうに抱く先輩のような態度。マサトは、あやすように揺さぶられ、げんなりした。
衣服は全て脱がされた。両足首を、黒い革ベルトで縛られ、背後のボード下部のフックに繋がれた。
両手は今は自由にされていたので、股間を何とか隠そうと努力した。だけど、男はそれを、振り払おうとしてくる。
思わずガードするように、力を入れるマサト。左手で、髪を掴まれた。
パメラがそうしたように、男は威圧的に顔を睨みつけて来る。気圧され、油断した隙に、根元を摑まれた。
「そ、それは、ちょっと……」恐怖に、消え入るような声しか出ない。
「ああっ？何だって？」
男は、鼓膜に響く位の声で脅してきた。
「そ、それは、俺のチ○コです」
なんで、そんな台詞になった？惨めで、悲しくなった。
「判ってるよ！」
男は、吐き捨てるようにそう言うと、マサトの陰嚢を弄び始めた。
「おまえ、パンパンじゃねぇか？ゴムボール見たいになってるぞ！」
経験した事のないごつごつした手で、性器を弄ばれる。
「こっ怖い」、とそう思った。世の女性達が、時に不本意に、こんな恐怖を感じさせられることがあるのかと思うと、男として申し訳ない気分になる。「パッ、パメラ、早く帰って来てぇ。速やかに」心の中で、呪文のように願いを唱える。
パメラに弄ばれている間は、ヤバイと思いながらも中途半端な心理状態だった。女性の管理下に置かれる非日常な雰囲気に、妖しいときめきのようなものも感じていたのかも。しかし、今は一つの日常が終わりを告げた。もう以前の自分にも戻れないし、かと言って、この状況に順応することもとても出来そうに無い。「Suddenly……」、頭の中を懐メロが流れる。
女性と男性で感じ方は違うだろうが、アリエスもこんな敗北感を味わったのだろうか？もうチームに戻って、リーダーシップを発揮する自信が無い。メンバーの顔を正視する事が出来るだろうか。可能なら、アリエスと部屋に引篭もって、傷口を舐めあいたい気分。
男の手付きが、悩ましいリズムを加え始めた。「やっ！ま、まずい」、萎縮していたものが、また大きくなり始める。
マサトの衣類を畳み終え、ジャケット、ズボンにシャツ、パンツと積み重ねたものを掌に載せ、ニジオが近づいて来た。ベルトのバックルをマサトの顔の前に近づけ、訊ねる。
「自分で買ったの？これ」
意図は解しかねたが、暴発寸前の性器に繰り返される刺激を忘れるためにも、その質問に注意を傾けた。
「アリエスに貰った……」
「ふ～～ん、彼女が彼氏に送るのには好ましくない紋章なんだけど。アリエスって魔術とかに詳しい？」
「いや、そんな趣味ぜんぜんなさそう。それに、女友達に貰った物らしい」
正確には、知り合いレベルかも。チームのプロテクションエリアのテナントで、アクセサリーショップを経営している女性に貰ったものだと記憶している。
ニジオは、鼻で笑った。
「他の女がくれたものを恋人に安易にプレゼントするなんて、大雑把な女！」
ニジオの肩越しに見えるディスプレイに、再びアリエスが映った。お尻の穴に例の玩具を突っ込まれたまま、陰部にはフックのような形をした電マ？が挿入されている。パメラがそれを吊り上げ、アリエスは後ろの女に寄りかかるように仰け反っている。
「その女があんたを狙ってるか。アリエス狙いだとしたら、ビアンかもよ」
そんな台詞は遠くに聞こえた。画面のアリエスから目が離せない。腹筋が痙攣し、頬が上気している。そして、マサトがこれまで何度も見たアリエスの逝き目。
タイミング悪く、男の指先が、マサトの雁頸を擦った。
「あっ！何か飛んだ」ニジオが叫んだ。
「おわっ、まずい！」、慌てて手を留め、マサトの男根を自由にするクロワッサン。
嘔吐くように脈を打つ男根。
「馬鹿ね！クロワッサン。弄り過ぎっ！もうパンパンなのに」
ニジオは呪文のように唱えた。
「静まれー鎮まれー」
クロワッサンが、頭を抱え、動物園の熊の様にフロアをうろつく。
「お仕置きされるー」
ニジオは追い討ちを掛けるように脅した。
「クロワッサン、きっと女装子させられるわ！アニソン50曲とか歌わされるわよ！多分」
腕を組みながら、嘆くクロワッサン。
「俺、嫌なんだよ。似合わな過ぎなんだよなぁー」
「そこがミソなのよ、パメラはそれが面白いのよ」
ニジオはそう言いながら屈むと、マサト本人ではなく、脈打つペ○スに向かって語りかける。
「メインスープは出しちゃ駄目よ！鎮まれー。お願い」
全部出ちゃったら、多分自分もパメラに怒られる。
「さあ、どうしようかしら。射精させちゃ、だめなんだから、その逆はありじゃない」
良いことを思いついたとばかり、マサトの顔を見るニジオ。
「あのさ、私達の穿いてる革パンツってさ、股の部分だけ素材が違うの」
そう言って、マサトの手を取り、自分の一物を掴ませた。
「透けてないけど、アリエスの着せられてたレオタードと同じものよ」
クロワッサンも意図を察したのか、マサトの空いた方の手を取り、自分の一物を預けた。
「男同士だから、判るよな？どうすれば好いか？」
唇の奥で、祈るように何か呟くマサト。
蚊の鳴くような声だったが、二人にははっきりと聞こえた。
「アリエス助けて……」と。
小さな快感の波が、何度もレナを襲った。しかし、真の頂には程遠く、腰の力も抜けて来た。
後ろによろけ、ミーナとケイが支えてくれた。
そのまま、尻餅を突く。
思考能力はほぼ失われかけていたが、目の前の光景には驚きを覚えた。
自分の模造ペ○スが抜け落ちたその部分は、口を開け、息づき、ローションを滴らせている。
えっ！開いたまま？と急に心配になるレナ。暫くすると、本来の自分を思い出したかのように、恋人のその部分は収束し始めた。
レナは少し安心し、背後のミーナの促すまま、彼女の胡坐の上に頭を預けた。
ミーナのペ○スを徐に掴むと、本物の男性にするように、軽く扱き始めるケイ。
快感の波が、再びレナを支配し始める。レナの胸と腹部を掴み、うねらせるように搔きまわすミーナ。頂に向かってレナを誘導しようと、二人の手業は巧みなコンビネーションを奏でた。
自分の両脚が、マリオネットの脚にでもなってしまったかのように、コントロールが利かない。意思に反して、宙に浮いたり、ケイの体に膝蹴りを入れてしまったりする。謝る余裕などとても無かった。太腿が激しく内に絞られたかと思うと、今度は外に開かれた。踵が、床を叩き、腰が持ち上がる。ケイは、身を捩りながらも、手業を緩めることはない。レナをクライマックスへ誘おうと、粘り強く手淫を続ける。ミーナの下腹部に、何度か頭突きを食らわしてしまった。ミーナも怯まず、食い下がってくる。体の中心を、上昇してくるような何かが流れる。頭の中がとうとう真っ白になった。自分の上げる悦びの声だけが、白く大きく広がり続ける心の中をこだました。