テーマパークの虜達 【36】



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 目前の男の、少年のように優しいうなじと肩のライン。それを見ただけで、アキラのこ
とを思い出した。 
 まさかこんな再会になるなんて!「貴方がぐずぐずしてるから!」素直な自分が心の中
で叫んだ。
 もっと普通に愛し合えた筈だったのに。
 そう思う反面。ひょっとして公の場で知らない男相手にセックス行為をさせられたり、
ひどいSMショーをさせられるのではないかという最悪な不安が一先ず解消され、微かな
安心感も覚えたりした。心の中の弱い自分は今にも泣き出し、甘えたい気分。
 アンダーヘアの生え際に彼の指先が差し掛かった時、レナは思わず腰を引いた。悪戯な
電流が体の中を駈けずり回り、彼女の思考を停止させようとしたからだ。股を引き締めて
も、もはや、局部や下腹部のピリピリやムズムズは収まりそうにない。どこにキュッと力
を入れれば収まるのか?恥ずかしい一帯がしゃっくりを始めそうな気分だ。右腕越しに、
相手のマスクの奥を見る。何処か野心足り無げで大人しい、窺がうような眼がこちらを見
ている。
 ああ、アキラ……。切ない思いと湧き上がってくる性のざわめき。裸足の足の裏も居場
所を彷徨い落ち着かない。昨日、サラに責められた体が敏感に成りすぎているのか、それ
とも望んでいた異性との初体験を彼女の本能が激しく期待し、興奮しているのか。
 乳首がビキニトップの裏地に押さえられ、ちくちくする。って言うか自ら、生地に突き
刺さる。そんなレナの乳房を、アキラは下から持ち上げた。遠慮がちに、掬い上げる。そ
の後、両手で柔らかく揉み解すアキラ。それをじれったく見詰め返すレナ。もっと、全体
を包むように揉んで欲しい。ちくちくするのが紛れるように。
 身悶えるレナをじらすかのようにアキラの手の動きが一端、止まった。
 おかしい!戸惑ったようなアキラの目付き。迷ったように再び弱弱しく掌を動かす。何
か命令でも受けたのだろうか。解答を告げるかのように、レナ側の教師の声が頭に響いた。
「ブラを外させるから、ホックを外しやすく背を浮かしてあげて」
 シングルの客も居れば、カップルもグループも居る。見知らぬ大勢の生の視線に囲まれ
たこのステージの上で、レナをセミヌードにしようと言うのである。アキラの戸惑いも理
解出来る。そんな気遣いを思うと、目の前に居るアキラが恋しくなった。彼の優しさに、
礼を示すことも出来ない。
 「早くしないと、後で押し置きするわよ」事務的にそして冷たく押し寄せる調教者の命
令。
 いたたまれなさとじれったさがレナの動きを投げやりなものにした。挑発的に胸を張り、
アキラの前に突き出す。
 謝罪するかのように優しく、レナを抱くアキラ。両手を背に回しながら、そっとキスす
る。大人びた動作。子供みたいに思ってたのに、ちょっとやきもちが焼ける。背中でホッ
クが外れるのが判った。ビキニトップの縁から外気が入り込んできた。レナの胸の高鳴り
を放出するかのように、熱気が開放される。煙でも飛び出すんじゃないかと、自分でも思
った。アキラの意外と逞しい胸板がレナのバストを支え、尖った乳首の違和感は、少し落
ち着いた。デニムの肌触りの白いブラは、レナの胸とアキラの胸の間に未だぶら下ってい
た。
 アキラの左膝が彼女の右側に出た。彼は主人の要らぬ命令を回避する為かのように、激
しくレナを抱きしめた。両手を頭の上に捉われたまま、力強く抱きしめられる。レナはま
るで演奏者にホールドされた楽器になったような気分。顎が開き、アキラの熱い吐息が浸
入してきた。思わず、舌を突き出した。アキラの舌と押し合い、そして行きかう。別々の
人間がひとつの物になることを望むかのような、感覚の貪りあい。
 しっかりと背と腰を抱かれ、お腹とお腹がぴったり合った。アキラの体温が冷えかけた
内臓に温かく伝わってくる。硬いものがレナの下腹部に当たる。少し、驚いたが、当たり
前のことだった。嬉しい感じもした。ただ、想像以上に大きい。心に浮かぶあからさまな
感想に、レナは更に顔を赤らめた。体全体をゆっくり上下左右に揺さぶれ、パンツ越しに
アキラの硬いものが押し付けられる。彼女の熱い部分と臍の間をじらすように頭をこすり
付けてくる。二人の密着した体の間にあるそれは、まるで、自分の体内を蠢く錯覚さえ呼
び起こしたが、レナの女性自身は、まるで窒息する寸前の金魚のように、未だ何かを求め
ていた。重なり合う唇の奥から声が漏れる。彼女の声はステージに流れると言う事実を微
かに思い出したが、もう興奮の吐息を隠す気はなくなっていた。というよりも隠せなかっ
た。
 耳栓をされたレナには、自分の吐息が、苦しい喘ぎ声のように響いて聞こえる。アルコ
ールにでも酔ったように、上半身から力が抜け、アキラの動きに翻弄された。白目を向き
そうな気分。濃緑のベルトに捉われ合わされたレナの手首は、まるで赤い珊瑚の又に寄生
し餌を誘うイソギンチャクのように、天井を目指して揺らめいた。そしてレナの腰は、下
腹部をもどかしく擦りあげて来るアキラの男根を定位置に誘おうと半ば勝手に浮き上がっ
た。こんな衆人環視の下ではしたくない、出来る筈もないとは思いながらも、レナの体は
主人の体面を無視して暴れだしそうだった。
 発狂しそうな自らの女体を持て余すレナに勘付いたのか、アキラの右手が再びレナの下
腹部に伸びた。体を少し斜めに構え、ボトムのウェストの脇から熱気を帯びた股間に手の
平を滑り込ませる。ビキニのトップが落ち、レナの右腰と、その辺りをもの欲しげに彷徨
っている白いナイロン生地に包まれたアキラの男根に引っかかった。それでもアキラは、
レナの乳輪が他人の目になるべく晒されないように気遣いながら、動作を続けた。デニム
のステッチに分かたれた二個の膨らみに感動しながら、さらに湿り気を帯びた部分に中指
を忍ばせるアキラ。人差し指の下にある指の膨らみでど真ん中を持ち上げ、左右に軽く圧
力を掛けながら、揺さぶった。そして包み込むように掌をフィットさせていく。
 アキラの掌に包まれ、安定した圧力を得、性器のざわめきは収まった。頭の上ではレナ
の五本の指先が、小魚を捕らえたイソギンチャクの触手のようにギュッと丸められた。
 そして今度は、泉の奥に潜むどうにも為らない煮えたぎった興奮が待ち構えていた……
 アキラの指の腹が左右に少しずれるように滑り、レナは紙縒りが捩れた様な感覚を陰唇
の狭間に感じた。いっ!と体の真ん中を電気が走り、気を失いそうな潤んだ目でアキラを
見詰めた。心の中で訴えるレナ。「私達これからどうなるの!」見返すアキラの瞳には、
これからのシナリオが思い浮かばない不安げな少年の面影が戻りかけていた。

  

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