テーマパークの虜達 【39】
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「はうっ」と言うレナの呻きがステージに響き渡る。アキラの唇と舌が奏でる二重奏と激
しい羞恥心に、レナのレセプターはフル稼働を強いられた。「もおほぉっ、だめ」吐く息
が、そんな感じに聞こえ、彼女のふとももが力強く閉じられる。アキラは吸い込まれるよ
うに前屈みになった。レナとレスリングでもしてるような有様。姿勢を維持する力も失わ
れ始め……
第三者の気配がする。突然、レナの体が揺れた。
背後で、空気が蠢く。レナの足が片方づつ、アキラの肩から引き剥がされるように浮き
上がり、視界が広がる。女の手が見えた。ゆっくりと立ち上がったアキラの前に、二人の
女性に挟まれたレナの姿が在った。女達は、レナの手首を自由にしようと、戒めを解いて
る最中。ミーナともう一人。昨日抱いた或いは抱かされた？二人の女性が、驚くほど膨ら
みあがったアキラの白いタンガの前部をちらりと見た。自分達の奥の院を昨日訪問した恋
人の健在振りを再確認するかのように。
尿道の中を蟲が移動するようなむず痒さが走った。ぶるっと震えるアキラ。そして、朦
朧としたレナの視線にも気付いた。アキラの心は、後ろめたさと、照れくささに乱された。
少しづつ縮み行く男根。はっと思い出し、観客席からの、ほぼまる裸なレナへの視線が気
になった。
ポーズもとらず、少し猫背気味で立ち竦む彼女の裸体は間抜けに見え、哀れを誘う。
左右にはミーナ達が立ち、ギャラリーの視線を防いでいる。ちらりと背後を振り向くア
キラ。入場した時は、トランポリンのように見えた円盤が膨らみ。口を開いたあこや貝の
ような姿を誇示していた。これでは背後の席からは、自分達は見えない。少し安心し、再
びレナ達を振り返った。観客たちの囃したてる指笛や喚声、そして音楽に混じって、パメ
ラの声が聞こえた。
「束の間の愛の巣よ」
ミーナに促され、レナがアキラの胸に上半身を預けた。
そっと大事そうに抱くアキラ。ミーナの、生徒を見送る教師のような視線を避け、テン
トの中を覗き込む。ラブホテルのような丸いベッドが二人を待ち受けていた。
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リタイアしそうな自分を励ましながら、実は、その気持ちこそ嘘で、あのおかしな数日
間に心捉われる自分の気持ち、否、体があることにひかるは気付き始めていた。
同性達に体を弄ばれたあの時間。隠したいものを無理やり引き剥がされ、興奮を覚えた瞬
間。悲劇のヒロインなんか馬鹿にしていたのに、それを口実に、パメラ達の演出と経験し
たことのない刺激に、身を任せる自分があったような気がする。いつもとは違うもう一人
の自分に、責任を押し付けようとする自分を許せない気もする。そう思うと、自らを苛む
ように、自分の乳房を捻り挙げたパメラの手の感触や、陰唇を摘み上げた指の感触が蘇る。
複数の女達の手に溺れる自分の肉体。思い起こすだけで蹲りそうになる。恋人に抱かれれ
ば、解消されるのだろうか、男にはない女独特の指使いがひかるの記憶に蘇った。おも
わず、自分の体を抱きしめたい衝動に襲われた。
でも、自分には課せられている。いち早く日常世界の用をすませ、テーマパークに戻る
責任が。自分の不在を穴埋めしてくれているマサトや仲間達。そして彼女の作戦に巻き込
まれ、自由を奪われたアキラ達のために。
部屋の灯りを消すことはせず、気を取り直して、ノートパソコンの電源を入れた。メー
ラーを確認する。幾つかの用のないメールを飛ばし、必要そうなものを探った。クラスメ
イトからのメールが在った。かつては親しいボーイフレンドだった子。良い仲になりそう
にもなったが、彼女が今の生きかたを決めてから、少し疎遠になった。彼女が取りこぼし
た選択科目の授業や提出物に関する情報が書かれている。レジュメ類は、「よかったら直
接渡してあげるよ」と追伸がある。
心の中から妖しいざわめきが消え、キャンパスに対する懐かしさが戻ってきた。久し振
りに帰る故郷への照れのようなものを胸に抱きながらも、勇気を振り絞り、携帯を手に取
った。通話待ちの数秒間。自分の秘密が一体どこまで守られているのか、このボーイフレ
ンドは、自分のこの数ヶ月に関して、何かを知っているのだろうか、突然湧き上がった恐
怖にも似た感情。携帯を持つ震える手を耳に押し当てながら彼が出るのを待った。
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メールの返信位は来るかと思ったが、まさか彼女から電話が掛かって来るとは思わなか
った。彼が覚えている元気な調子ではなく、おどおどしたたような口調に思えた。何かお
互いそっけない日常会話になったが、明日、キャンパスで会う約束をした。
グッジョブと思わず叫びながら、ネットを開いた。あまりにも生々しく彼女の存在を感
じたために、今までネットで拾ったアリエス映像を見るのも新たに探るのも、少し後ろめ
たさを感じた。
自作の赤いカクテルを啜りながら、テーマパーク関連のアングラサイトを回遊する内。
ライブっぽいコンテンツを見付けた。クラブっぽい空間に大勢の人が居る。ロックコンサ
ートのように騒いでいた。ステージの上に白いテントのようなものが在った。アップのカ
メラで見ると、中で男女の蠢くのが見える。
デティールが見えないのが悔しい。幸い彼が会員になっているブローカーからのチャン
ネルが通用した。マルチプルアングルの一つを選ぶ。行き成り、若い男女の股間が現われ
た。上になった男の方は、オーソドックスなピンク色のゴムを嵌めている。女の局部には
白い布切れが張り付いているが、その上をこすり付ける男根が今にもそれを剥ぎ取ろうと
していた。男の両膝が女の太腿を押し上げる。もはや、二人とも尻の穴丸出しだった。
俯瞰するアングルを選んでみた。二人とも白っぽい光沢のあるマスクを付けている。口
元は開いており、女の唇が見えた。不安そうに喘いでいる。セックスの真っ最中には見え
ない。二人は、まるで初めて同士の中学生が愛し合うかのようにぎごちなかった。