テーマパークの虜達 【42】
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実際、校内のエレベータの横で彼女と逢った時、全然気付かなかった。声を掛けらても、
誰だ？と思った。でも、一成の顔を少し不安げに見守る彼女の円らな瞳と目があった途端、
光の存在感はとんでもなく大きく一成を包み込んだ。後ろに退き気味で、「待った？」と
言うのがやっと。大人びたリクルートスーツ風の出で立ちで、しかも、彼が始めて観る光
のスカート姿。髪も首筋が見える程、短くなっていた。アリエス＝光と言うのは、ひょっ
として自分の思い込みか？自信が揺らいだ。
光が自ら話を打ち明けた今も、どこかで、それを確かめる自分がいた。光のふくらはぎ
やくるぶし、足の指先などを、背後にいるのをいいことに観察し続けた。でも一方でディ
スプレイの映像がアリエスの陵辱的なシーンを映し出していることを思うとドキドキした。
光と会うことが決まった昨夜からあまり何も考えていない。考えると、まるで犯罪者にな
った気分がしたからだ。光の横顔を伺い、彼女の反応を探る。首筋に微かに汗が光る。十
中八九怒ってそうな感じがする。激しい軽蔑が後ろ盾になってたらやだな。そう思うと、
一成の顔は、知らず知らずの内に光の横顔に近づいていた。ディスプレイを見ると、女達
の指先がピラニアのように彼女の性器を弄ぶ場面が展開していた。お尻の穴にも、細いオ
レンジ色の棒のようなものが挿し込まれている。括約筋が抗い、惨めな皺が現われては消
える。まずいな……。ハードな部分は編集しとけば良かった。茂みの狭間が煌き、雨が滴
り落ちるように、何かが迸った。後続の迸りは小さな滝のように流れる。光がとうとう振
り返った。一成は、ソファのクッションを握り締め、後ろに体重を掛けた。
「これ、私じゃない！」
驚き、まじまじと光を見詰め返す一成。光の目には、涙が光っていた。
彼女の瞼で揺れていたものは、溜まらず前に零れ出た。まるでそれが合図となったよう
に次々と涙が零れ落ちる。ディスプレイに映る放尿シーンを彷彿とさせるその光景に一成
の男は不謹慎にも興奮を覚えた。
「おしっこなんてもらしてない！」
一成は宥めるように頷きながら、少し感動した。光は、まだ人前で放尿まではさせられ
てなかったんだ。かなりの部分にフェィクビデオが混じっているとは思っていたが……
光の敵方は、映像をより刺激的なものに仕上げる為に相当編集していた。再びディスプ
レイと対峙した彼女は、今度は、一成に説明し始めた。一つ一つ指差し、自分じゃない映
像を指摘する。その姿はまるで先生に一生懸命力説する一年生のよう。
「これ私かな……」
そう言う彼女が心配になった。やはり大部分は光なのだ。顔とそのプライバシーの欠片
も許されない赤裸々な肉体が同じショットに収められたシーンも幾つかある。
フロアに腰を降ろし、彼女の傍らに座った。彼女の心が壊れない内に、勇気を振り絞っ
て、その腕に手を添えた。ようやく映像から注意を逸らした光。涙の滲んだ目で一成の表
情を窺う。一成は更に彼女に近づいた。甘い匂いがする。自分の作ったカクテルの匂い？
それとも彼女の髪の匂い？それを確かめるように更に近付く一成。
甘い匂いの正体？彼には自分を招待する野性的なメスの匂いだと思えた。彼女を触る手
に力を込めてみた。
「私には恋人がいるわ……」
振り絞るような声でそう言う光、でも抗う構えは返って来ない。
光の心は未だ壊れてなかったが、彼女の体のガードと一成の理性は数秒前に砕けちゃっ
ていた。悪くて和姦だろ……。心の中でやんちゃな悪魔が囁いた。彼は、数日前に一人で
抜きまくったその床の上で、とうとう当の本人を押し倒した。ゆっくりと優しく覆い被さ
って来る男の下で、光は仕方なく瞼を閉じた。一成の愛撫に期待を感じる自分の体に当惑
しながら、彼の口付けを待った。
ディスプレイのビデオは再び一巡し、ペットボトルのような形をしたブースの中で、自
分の未来を心細気に待ち受けるアリエスの姿があった。
★
ここ数日で、トキエやアキラを慰み者にした場所。頭の曲がったスプーンを逆さまにし
たようなスタンドにはカーテンが掛けられている。すっかり、自分達の溜まり場となった
この場所で、ゆっくりと制限時間のないプレイを楽しもう。個室から呼び出された目の前
の獲物はすっかり、大人しくなっている。少なくとも、暴れそうな気配はない。調教用の
電撃ブーツも着けさせていない。自分一人でも、別に不測の事態はおこらないだろう。ゲ
ーム上の自分が置かれた境遇を受け容れているようだ。パメラに言わせるとそれは当たり
前で、そもそも敗北者の罰ゲームとして捕囚期間が設けられていることにプレイヤーは同
意しているし、捕虜は、勝者側の演出やゲームの進行を損なってはならない規約がある。
まあ、ゲーム世界の流れがファンタジックな方向からだんだんとアダルト色を強めつつあ
るのは彼らには心外だろうが、それさえもアリエスやレナがエントリーした時期には、あ
る程度の自覚があった筈だ。すべては、ネットの住人達の市場的欲求がもたらした結果。
自分はヒールなキャラを演じているが、本当の悪役として糾弾されるのは、お門違いだと
思う。とは言うものの、実際アキラ達に脅迫めいた手段で数々の規約違反や道徳的な逸脱
を行っているのも確かなのだけれど……
演出だと言うのであれば、本来ネットにオンラインされている部屋でイベントを行わな
ければならないが、この公にされていない空間で彼等に悪戯を行うのは、仲間内では、ゲ
ーム捕虜に対する演技指導だと勝手に位置づけているパメラ達だった。
スタンドのある方向に頭を向けさせ、丸裸のアキラをフロアの上に、仰向けに寝かせた。
両足を宙に上げさせ、腰掛のようなものを押し入れた。アキラの両手に皮手錠を掛ける。
目線に困るのか時折目を閉じるアキラ。パメラは構わず、彼の両手首を腰掛の下に引き込
む。そして、手錠の片側を座版の裏側のフックに固定した。人間が正座したような形の両
脚。独特のスタイルのこの腰掛は、パメラが特注して作らせたものだ。アキラの両足を開
かせると、腰掛の太腿のような両脚にそれぞれ跨がせた。チン○が、アキラの股間で左に
揺れる。見るとそれは、半起ちになりかけている。パメラの表情が綻んだ。
尤も、アキラには意地悪な笑みにしか見えないだろうが……