テーマパークの虜達　【45】
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　パメラの指定通りの時間に部屋へ向かった。ヒトデ型の小さなニップレスとその親玉の
ようなボトム。後ろみごろは無く、紐だけ。この衣装？もパメラの指示によるもの。恥ず
かしくもあったが、もうこれからこの先、こんなドキドキするような格好をさせられるこ
とがあるだろうかと思うと、感慨深いものも感じた。ゲームの敗北者としての惨めな境遇
におかれながらも、受身で甚振られる中で湧き上がる甘酸っぱい快感を知った？というか
教え込まれた。
　しかし、昨日の夜。意地悪な勝利者は、突然、ミーナを解放することを約束したのだ。
彼女の下で働き続けることをはっきり辞退したミーナに対して、愛想を尽かしたのか、そ
れとも彼女に隠された内面の優しさなのか。行きがかり上、アキラとの約束を本当に守っ
ただけかも……。彼には、感謝している。何も助けてやれないのが悔しかった。アキラの
意中にレナさえいなかったなら、パメラの勧めを断り、アキラの試練を共有してやってい
たかも知れない。
　いずれにしても、週末には、パメラの属国としてではあるが、独立した惑星のオーナー
となる。そして、週明けには、プレイヤー契約の打ち切りを申請し、これまでこの世界で
稼いできた仮の報酬を、満額現金として受け取ることが出来る。何年か働かなくても済む
金額だ。自分がこの数ヶ月させられてきたことを考えると、安すぎるとも思った。でもリ
タイヤして、なにも貰えないよりは遥かに良い。
　掌の形をした窪みに手を翳すと、扉がシュパ～～ッと開いた。カーテンのかかったスタ
ンド越しにパメラの姿が見えた。背後で扉が閉まり、部屋の空気が再び安定する。またし
ばらくの時間、私は逃げられない……非日常的な人間関係のルールから。
　興奮に乱れそうになる呼吸をコントロールする術も、最近ようやく覚えたばかり、そし
てそれももう終わりを迎えようとしているのだ。校舎裏で後輩を見つけたスケ番のような
目つきで、パメラが目配せした。左手に在る網状パーテーションの裏へ歩む。水周りのあ
る一画。目隠しにもならないパーテーションは一体なんのためか！壁がくり貫かれたクロ
ーゼットからバスケットを採った。アキラの為に用意された様々な小物！これからの時間
を思うと頭が重くなる。一画を通り抜け、パメラの背後に廻った。ミーナに気付いたアキ
ラが、恥ずかしげに顔を逸らす。やつれた表情に反して、彼の股間で脈打つシンボルは、
不自然で有りえない様に見えた。それを見た自分の頬が赤らむのに気付いた。彼の前で散々
恥ずかしい行為を披露し、また激しく愛し合い？もしたにも拘わらず。未だ、強い羞恥心
を押さえきれない自分に悲哀を感じた。穏やかな呼吸に務めようとするアキラの上半身は、
猛ろうとする自分の分身を宥めようと必死だった。ミーナは罪悪感を感じた。こんな惨め
な様を異性に晒される辛さを、自分もまたパメラ達に思い知らされた経験者なのだ。にも
拘わらず、自分は、今アキラを辱める側の一員である。あの時パメラ達に感じた恨めしい
感情を、今彼が自分達に抱いているかもしれないと思うと、悲しくなる。
　視界にバスケットを差し出すと、女王は、あるものを指し示した。透明のビニール袋に
入れられた黒い布切れ、ファスナーを開け、摘むように取り出す。密閉されていた為、ま
だ湿りけが残っている。持ち上げると、鼻腔に匂いが届いた。時間が経った同性の汗や分
泌物の放つ匂い。当事者には気の毒だが、「おえっ」となった。
　意識して丁寧に手渡すと、やっぱりパメラは汚いものを摘むように受け取り、それをア
キラの鼻面でぶらぶらさせた。顔を逸らすアキラの後ろ髪を掴み、顔を正面に向けさせた。
鼻に押し付け、否でも吸い込まなければならない状態にする。
「臭いっ！」
　小さく呟くアキラに、パメラはほくそえむ。
「えっ？」
　わざとらしいパメラに。アキラは再び呟いた。情け無げに……
「臭いんです……」
「あれっ！」
　眉を吊り上げ、大仰に驚くパメラ。
「おかしいわね」
　一先ず、それを顎の辺りに降ろし、アキラの呼吸を楽にしてやった。
「おまえさっき、いい匂いだって言ったじゃない。わざわざ取って置いてあげたんだよ」
　それで、アキラの顎を拭うようにくすぐる。
「オークションにかければ、10万は降らないと思ったんだけどね！」
　本当はプレイヤーの私物を他のプレイヤーが売り払うのは、規約違反だが……
「もう一度大きな声で言ってみる？レナは落ち込むかもね」
　お茶目な表情で、アキラの心を揺さぶるパメラ。
　ヴァーチャル体感装置で見せられた映像がフラッシュバックのように、アキラの頭の中
で蘇った。
　閉じ切らない肉の狭間から飛沫が滴り、座面に小さな水溜りを作った。
　テーブルの上からショーツらしきものが手にとられ、女性器に宛てがわれた。赤く充血
した部分を拭い、そして性器全体を弄った。黒い生地に分泌物が微かにまみれている。
　記憶が過去を彷徨い、目が霞む。そんなアキラを呼び起こすように、パメラの声……
「レナのお○んこは臭いのね？」
　首を振るアキラ。
「どうなの？」
「好い匂いです」
　少しきついパメラの口調に、催眠術にかけられた被験者のように応えるアキラ。
「お味は？」
「美味しいです」
「ふふんっ」と女王は鼻で笑った。
「あなた。鼻詰まってない？」
「詰まってません」
「じゃあ、あーーんして」
　麻酔の効いた患者と歯医者のような会話の後、パメラはそれをぐりぐりとアキラの口に
頬張らせた。
　まるで魂の契約を成立させ終えた売り出し中の悪魔のよう。ミーナは、そんな印象でパ
メラの横顔を見詰めた。
　視線に気付いたパメラは、ミーナをチラリと見やった。
「この子、憎たらしい口の利き方するから、少し黙らせようと思って……」
　アキラにも聞こえるようにそう言い、愛想良くミーナに微笑んだ。
　二人は、棄て猫を見つけた小学生のようにアキラを観察した。
　口腔と鼻腔を侵す恋人の臭いを肯定的に受け容れようと、健気に息遣いを工夫する可愛
い動物を……
　女王は奴隷の服従の程を値踏みする。そして、その従者は、「アキラの咥えているもの
が自分の穿いていたものだったら」と、いけない想像を巡らせていた。