テーマパークの虜達　【52】
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　女王の操るバイブの上を踊り、男の持ち物は、Ｍ役女性の股間の下でのた打ち回ってい
る。その陰に隠れ、時折、赤いものが、ちろちろ顔を覗かせるのは、まるで、恐る恐る土
の中から出ようとするミミズのようにも見えた。口に出すのも恥ずかしい部分から、水飴
のように糸が曳いた。猫の毛が逆立つように、ワンダーの肌がざわめいた。「いや～～」
と自分の皮膚が悲鳴を上げている。
　どれ位羞恥心をコントロールする修行をしたら、恥ずかしい部分をあんなに剥き出すよ
うなポーズが採れるのだろう。Ｍ役女性は、まるでトムにわざと女性の秘密を見せびらか
すかのように、局部を左右に振り、蕾を蠢かせた。
　そんな、ワンダーの気も知らず、トムは男と女の大事な部分が行き交うのを凝視してい
る。彼女は石像のように固まったトムの肘を遠慮気味に引っぱった。本当は、グイと引っ
張りたい気分だった。"お願いだから！！あんまり、じっくり観ないで、私にもあんなの
が付いてるのよ～～！"心の中で叫んだ。自分のビラビラもあんなに生き物みたいに見え
るのだろうかと思うと、気を失いそうになった。自分の秘密をトムに見られてるようなお
かしなというか恥ずかしい気分。って言うか興奮してキターー。

「着エロで参加して見ます？」
　ワンダーを見やり、アカネがしれっと言った。
　その言葉に、ドキッとし、体の血が、上半身で沸騰しかけた。
「貴女自ら、営業して下されば、儲かりますわよ。ここは今、貴女の星なんですからね」
"ふむふむ" と思わず納得してしまいそうな、理由付け……
　頭の中で、天使のような姿の何かが叫ぶ。
"だめだめだめだめ、ＳＭなんてとんでもない"
　それに答えるように回想する自分。
"でも凄くソフトで、着エロっぽい撮影会のバイトならしたことあるな"
　頭の中の会議が纏まらず、ただ驚いた目で、アカネを見詰め返すワンダー。
　調子に乗ったアカネが、掌をお客と女王たちの方に差し出しながら言った。
　「それとも、同じシチュエーションでお二人もどう？私が直接手ほどきしますわよ」
"ありえない、ありえない！ありえない？でも、ありえないが何パーセントで、ありえる
が何パーセントだろうか？1パーセント位？それともひょっとして10パーセント位？"股
関節の力が抜けてきた。下唇を噛みながら、頭を振るワンダー。この微かな仕草に、アカ
ネは気付いただろうか？小娘だと馬鹿にされるのは嫌だった。
　トムは失礼な申し出に、少し怒ったよう。彼は、ここを訪れた本題であるビジネス上の
質問を始め、三人は部屋の隅に移動した。
　全てのサービスが電子マネーで、決済されてる故、彼女達が不正な報酬を得ることはな
いこと等……以下云々イベントの司会者宜しくとうとうとスピーチのように説明し始めた。
　ムカッとしたトムの表情にも大人の態度で対応するアカネ。それに本来、トムが聴取し
ている内容は、ワンダーが聴きだすべき案件なのだ。
　なにもかも、トムにまかせっきりな自分が、何だか少し情けない。
　そもそもアリエス達を助けたのは、自分のチームだとも言えるのに。
　それよりも、一体どんな顔で、自分がアカネの提案を聞いていたのだろうか、それが一
番恥ずかしい。今も激しく顔が火照っている気がする。
　バイブレーションの音が、ひと際、不安定になり、椅子の軋む音も激しくなった。ワン
ダーを悩ます男女の切ない声も、抑揚が激しくなり、情が篭ってきた。
　後ろで、「ぐぅっ。いくいくぅ」と言う男の声がする。
　ｓｍの時、男性はどんな風に、何時、クライマックスを迎えるのだろう。Ｍ役の女性は
そもそも本当に感じてるんだろうか？そんなことが気になり、後ろを振り返りたい誘惑に
駆られた。もう、アカネの説明も良く聴けてなかった。あとで、トムに説明して貰おっと！
　たくさんの情報が頭の中に入ってくるこの部屋の中で、彼女の感覚を刺激する新たな情
報が進入して来た。
　えっ何？トムが動き出したのに気付いたワンダー。彼はアカネに背を向け、歩きながら、
独り言を言ってる。
　こめかみが、ビリビリこそばかった。彼女のチームの女の子が、ワンダーに呼び掛けて
るのにようやく気付いた。なんだ、トムもチームの誰かから、呼び出されたんだ。独り言
と思った自分が笑えて来た。
　インカムのマイクに返答しながら、こんなことも考えた。男女の喘ぎ声が、ひょっとし
て、マイク越に聞こえちゃうかな？お客の男とＭ役の女がいい具合に、オペラを奏でてい
る。うわ～～こりゃ。後ですげ～～聞かれるわ！めんどくさ！
　自分もアカネに途中退座を断ろうと、彼女の顔を見やった。
　プレイヤーとしてのワンダーの目は、遠くを見るようなアカネの微かな笑みを見逃さな
かった。
　やっぱり、この女はパメラの懐刀なんだ。