テーマパークの虜達 【59】
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「ええっ！サラとショウとの交渉が決裂した？」マサトは思わず叫び、操縦席から立ち上
がった。
こちら側の勢力は、既にサラも分析済の筈だ。サラ軍単独では、太刀打ちできまい。ま
さか、既にパメラと同盟を結んだのか？それにしては、パメラの軍勢が一隻もいない。レ
ナを彼女達に引き渡した様子もない。
マサトはこの作戦に出発する前、隊員に調べさせたターコイスをめぐる各勢力の最近の
動向を、思い返した。
もともと半年前までは、惑星ターコイスは、ミーナと言うプレイヤーの支配下にあった
らしい。それ以前は、未開拓惑星扱いだった。不幸にもミーナの軍はパメラに狙われ、二
月ほどの天下で、主の座を奪われた。しかも今は配下として隷属させられているらしい。
その後、パメラとディアナ、アリエスを加えた三つ巴の勢力争いが起きた。その間隙を
縫って、サラがターコイスを掠め取る。彼女は、近隣宙域で、新しくプレイヤー株を取得
したばかりの新参者だったにも関わらずだ。
でも、これは表の歴史、或いは……。
ゲーム参加者はゲームエリアでのプレイ中、自チームの宇宙船を介さず、他の惑星や基
地へ移動することは出来ない。その制度が採用されている一番の大きな理由は、ゲームの
世界感の崩壊を阻止するためである。簡単に言うと、惑星から惑星へ歩いて行けたらおか
しいからである。実際、ゲームエリア、ホストエリア、ゲストエリアの各区間や非常口に
は顔認証システムが導入され、プレイヤーの不正な移動を厳しく監視している。しかも、
各エリアへの移動に関しては、一般入場者、プレイヤー、共に正式ゲートの通行が義務付
けられており、移動ケースに応じては、声紋、掌紋等、に拠る認証を要する。
一方で、ゲストエリアの民間船（園内各エリア中継用のライドのようなもの）を使用し
てなら、幾らでも移動できる。要するにスパイ活動や、隠密行動も可能なのである。但し、
プレイヤーは不正、つまり正式に認可された休日以外の時間にゲストエリア以遠に出た場
合、全ての権利と稼ぎを失う。
マサトの脳裏に嫌な想像が浮かんで来た。「うわ〜〜。まさか、パメラはターコイスに
居るんじゃないだろうな……」
アリエスの事を一緒に心配してくれたあの真面目そうなレナが、パメラに裸に剥かれる
こと、いやもっと破廉恥な行為を強要されている姿を想像すると、胸に、そしていけない
場所にも激情が溢れて来た。悲しい男の性だ。マサトは頭を振って、座席に着き、ハンド
ルを握った。こんな心配？妄想？を払しょくする為にも、早くターコイスを攻略しなけれ
ばならない。
マサトとショウは、南北から敵の基地がある孤島を攻撃すべく、それぞれ進路を取った。
赤道に対して徐々に船体を水平に向ける。同じように、宇宙船の大編隊がマサトの操縦
するフラッグシップに続く。
大気圏内から、銀色の小粒のようなものが、浮かび上がって来る。迎撃部隊だ。一隻、
二隻、三隻…ありゃりゃ、4、5、6、7、8、9、10と、殆どサラ軍の全船じゃないか？運
悪く、南から侵入しようとしたアリエス軍が、主な迎撃対象にされたようだ。その隙に、
レナ軍は、敵基地を存分に叩ける訳だが、アリエス軍側としては面白くない。こちらの方
が、数で圧倒している。勝てない比率ではない。しかし、今後のことを考えた場合、あま
り損耗が激しいと、今後予想されるパメラ達の反撃に耐えられそうもない。最悪、ディア
ナの軍門に下る以外選択肢がない情勢に陥るかも。いずれにしても、アリエスが戻って来
てから考えることだ。
マサトの頭の中をアリエスがプンプン怒る姿が思い浮かんだ…、うへぇ〜〜〜。
★
レナはスタンドの天井に、手錠を固定され、危ないからと言う理由で首輪は外された。
「危ない」と言う言葉は、レナにいろんなことを推測させたが、心の中ではその回答は得
られなかった。お化け屋敷に入る前のドキドキの様な感情が、昂って行く。実際にはもっ
と凄い不安を伴った心理状態なのだろうが、彼女の体の中で分泌されるアドレナリンと、
自分のコントロールを離れて騒ぐ性的な欲情がそれを中和していた。感情の高止まりのよ
うな状態。
「口枷も取るけど、さっきの注意は、覚えてるよね？」
パメラは確認を取り、レナは熱に魘される病人のように重々しく首を縦に振る。
唇を、僅かにパクパクし、アキラになにか言いたげなレナの素ぶりだったが、彼は気付
かなかった。
ミーナは、アキラの両腕を手錠とベルトで後ろ手に固定した。腰の少し上あたりでクロ
スされた両手。アキラは罪人のような扱いをされながらも、パメラから恥ずかしめを受け
る時、こういった拘束が、何かしら心が楽になる作用があることにも気付き始めていた。
また、この部屋の外にはパメラ軍の男性隊員が数名いることも改めて告げられた。もは
やアキラに抵抗する気はないものの、暗に脅されたのである。こんな状況で、自分以外の
男性がこの部屋に入ることなどけして容認出来ない。それを考えるとまだ、これらの仕打
ちがましに思える。パメラの術中に見事に嵌って行く自分たちが自覚できた。にも関わら
ず、パメラの描くストーリーに身を任せようという、普段とは異なる自我に抗うことが出
来ないのである。
「さっきサラが言ってたけど、どこ？」
パメラがそう言い。ミーナがジェスチャーで答えた。鳩尾から臍に向かって、線を引く
様に薬指を走らせる。パメラがその動作を、レナの腹の上で再現した。ハミングするよう
な悲鳴を上げるレナ。湿り気を見つけ、レナの臍を穿る様に、人差し指の先端を差し入れ
た。
「いぎぃっ！」と呻くレナ。
そして、引き揚げた指先を、彼女の顔の前に翳した。大分水気を失い乾いたそれが、糸
を引くかどうかレナの鼻先で試す。親指と人差し指の間で、糊が離れるように極微かな糸
が、幾本か引いた。
「アキラから貴女への愛の証よ！」
珍妙な面持ちで、それを眺めるレナ。
自分の恋人の精液を他の女に弄ばされ、揶揄されて、その悔しさを表明できない心の葛
藤が、レナの表情を強張らせたのだ。
「ほらっ！」と言って、パメラは、それをレナの鼻にぬすくり着けた。思わず、顔をのけ
反らせ、唇を歪める。アキラの匂いが鼻孔を侵した。スンスンと鼻を鳴らす。
アキラの方をチラ見するレナを尻目に、今度はレナの履くビキニのボトムに、グイと右
手を差し入れた。アンダーヘアが、本日初対面の女に描き分けられ、今にも急角度を駆け
下りる寸前のジェットコースターに乗る乗客のような気分に見舞われる。「ひっ」と悲鳴
を上げ、ボディーブローを食らわされたように腰を引く。指の背に当たるバイブの出っ張
りにも構わず、グイと指を押し付けて来る。濡れ濡れになって色々と境界が曖昧に感じら
れたが、中心の受入口はメリハリがついていて、レナの意思に反して、パメラの指先をズ
ボンと吸い込んだ。
「はおっ」と吐き出されたレナの息がパメラの左の髪をそよがせた。
パメラは辱めるように、業と驚いたような顔を見せ、レナの顔をマジマジと見詰める。
拳骨を下されるのを予期し怯える子供のように、パメラの顔を見つめ返すレナ。恋人以
外の人物の指先が、今自分の体内を蠢いている。その事実に下半身が戦慄いた。
泣きべそを掻きそうなレナを見て、パメラは右手をレナのボトムから引き揚げた。自分
の指先から手のひらに掛けての照りをマジマジと見詰め、おもむろにレナの顔を両手で掴
む。そして、彼女の左の耳の裏から顎の裏を経て、右の耳の裏に至るまで、レナの性器か
ら得た付着物をぬすくり着けた。まるで、髭反り前にシェービングクリームを引き延ばす
かのような仕種で、スリスリと……。
数秒後、レナの鼻孔の中でかくれんぼするアキラの匂いを上書きするかのように、今度
は自分の微かな性臭が漂って来た。悔しく口惜しい筈のそのことが、意に反してレナの恋
心に火を付ける。激しく燃え上がるアキラへの想い。
レナに向かって膝まづかされているアキラ。スイッチの切れたロボットのように頭を垂
れる彼の顎を、ミーナはグイっと掴み、レナの方へ向けた。そこには、白昼夢を見るかの
ようなレナのぼんやりとした視線があった。アキラと目が逢い、自分と愛し合いたいと言
う彼女の切なさが、確かに伝わって来た……。