テーマパークの虜達 【21】
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どこから出したのか、茜がポラロイドカメラを持って、パメラの背後に立った。
アキラは写される恐怖に戦慄を覚えた。「やめて」と懇願する間もなく。フラッシュが
焚かれ、一枚撮られた。「何でこんな古い玩具持ち出したか判る？」茜が言い、パメラが
動いた。近づく彼女は、アキラの頭髪を鷲掴みし、横から睨む様に見据える。茜がアキラ
の股の下からフラッシュを焚く。ジーというフィルムの吐き出される音を聞きながら、人
間にこんな種類の恥ずかしさがあったのかと、思い知った。激しく赤面する自分を押さえ
きれない。恥ずかしがっているのを悟られるのが余計に悔しい。パメラはそんなアキラを
見て、優しげに微笑む。でも、アキラの頭髪は掴んだまま。
「あなたが大人しく捕虜の役目を務めあげれば、この写真は返してあげるわ」
茜が腰に手を当て、構図を考えている姿が見え、気になった。
「それに、もうひとつご褒美をあげる。そのためには、あなたにやってもらわなければな
らない仕事があるけど」
パメラがミーナを振り返った。アキラの頭も、まるで物をあつかうようにそちらに向け
られた。
「それをちゃんとやれば、ミーナを独立させてあげる。自由なプレイヤーとしてね。もち
ろん私達の仲間としてだけど」
ミーナがちらりとこちらを見た。恥ずかしさに、思わず肛門を引き絞る。ミーナが目を
反らせ、それさえもミーナに丸見えであることを思い知った。フラッシュの焚かれる音が
する。アキラはもう泣き出しそうだった。
パメラは、普通の男が人前で泣くことを恐れるのを、充分に承知していた。アキラが鼻
をすするような音を立てた。アキラの感情が限界に来ているのを見て、パメラが指先で指
示すると、ミーナはくるりと向こうを向いて、ゆっくりと四つんばいになった。
アキラはそのことに驚きながらも、自分の心が少し落ち着くのを感じた。
アキラの髪を掴むのを止め、パメラは、床に落ちたタオルの一つを持つと、ミーナに近
づいた。鞭の柄をミーナの脚の間に挿し入れ、ポンポンと内股を叩いた。命令を確認した
ミーナが脚を少し開く。尻の割れ目から大陰唇の佇まいが覗く。昨夜の刺激的なシチュエ
ーションと違い、それは、どこか間抜けに見えた。顔の見えない女の股の、色気のなさを
心の奥底で思い知りながらも、新たに心に浮かび上がった罪悪感に苛まれ、アキラは、ミ
ーナの姿から目を反らした。
何時の間にか近づいた茜がそれを許さず、アキラの髪を無造作に掴み、アキラの顔をミ
ーナの方に向けた。一時でもこの二人の支配者の、心根の優しさを想像した自分の幼さを
呪った。二人は、昭かに、アキラの心の動きを見透かして攻撃をしかけてくる……
「見るのよ！！」茜が迫る。「それともおしっこ漏らしたい？」その手には例のリモコ
ンがあった。
アキラは、確信を得たような諦めに心を征され仕方なく目を開いた。
パメラが鞭の柄でちょんとミーナの尾骨を叩くと、ミーナは、尻を突き出し、彼女の肛
門と性器は、アキラに向かって剥き出しになった。最後の羞恥心の砦までも他人に支配さ
れる。こんな立場に陥ったミーナが哀れで、泣きたくなった。でもそんな自覚は、自分に
もすぐに戻ってきた。他人ごとではないのだ。茜が手を伸ばし、アキラのペニスを、まる
で犬の耳でもはじく様に、指先で玩んだ。
パメラが手にしたタオルでグリグリとミーナの性器と肛門の周辺を拭いた。男親が悪戯
っ子の顔の汚れを拭うように。痛そうに、ミーナが尻を揺らす。
タオル越しにミーナの陰部全体を掴んだ。何かを確認する様に、揉み解す。
「あんた、お○○こ膨らませてるね」
詰問するように、さらにその辺りを揺さぶるように揉む。
「男の子の恥ずかしい姿見て興奮したのね」
パメラはそういうと、先が幾つにも分かれた鞭で、ミーナの尻を打った。パシンと派手
な音が鳴り、ミーナとアキラだけが驚いた。しゃがんだ姿勢からおもむろに立ち上がり、
今度は腰を叩いた。ミーナの肛門と割れ目が引き付く。ミーナの陰部が見せるあからさま
な表情がアキラの性的感情を昂ぶらせた。茜にペニスを突付かれながら、再び充血してい
くのを感じる。ヒールの音を立て、パメラは、こちら向きにミーナを跨ぎ、その背に軽く
座った。両手で内股にかけて、深深と尻を掴み左右に引いた。いやらしく色付いた性器が
全貌を顕わした。パメラは指を使い、標本のようにミーナの局部を押し開いた。生々しい
その赤い口を覗き込むようにし、パメラは言う。
「あなたが散々突っ込んだんで、良い色になってるわ。さすが挿せ子ちゃんのお○○こね」
そう言うと、パメラは、ミーナの陰唇を子供の鼻でも抓むかのように掴み左右に振った。
ミーナの悔しそうな表情がアキラの脳裏に浮んだ。
★
煌く星空のもと、真っ青な水面に銀色の飛魚の群れが飛び上がり、宙に舞いあがった龍
の子供が、それを追う。
トキエは、ジャグジーの縁に頭を預け、見下ろす様に、水平線の彼方を見詰めた。実際
は、彼方ではなくスクリーンに映じるＣＧなのだが。そんなファンタジックな光景が、反
って、トキエの壊れそうな心をケアしてくれる。対面で脚を伸ばせば、触れ合うほどの直
径。そんな浴槽に、すっぽりと被さるだけの暗い小洞窟。自分以外人気がないのが心を休
めた。トキエは、昨日の午後からホストエリアにいる。一般客は、ゲーム空間であるプレ
イヤーエリアには、入れない。ゲストエリアには、条件付きで入れるが、ホストエリアに
は、プレイヤーの招待がないと入れない。想えば、ホストエリアの認証ゲートを通過した
時、悪魔の境界線を越えたのだ。
微かな朝焼けを背景に、まだ子龍は勇ましく飛魚の群れを追っていた。
泡の奔流が泣きつかれたトキエの体を慰めてくれる。だが、体が弛緩し、頭が正気にな
ると、昨夜の事を思い出す。手足を拘束され、複数の男女に玩ばれた。ここでパメラと呼
ばれている女以外は、初対面だった。写真も撮られた。彼女を信じたとしての話だが。顔
の映ったものは、返してくれた。何よりも、自分のあの部分の奥深さを思い知らされた事
が衝撃だった。今まで体験したことのない快感が体の隅々を走り回った。それが、自分で
も恋人でもない、見ず知らずの連中によって開示されたのが、悔しくも恥ずかしかった。
女であることが怖くなった。下腹部に力を入れ、絞った。まるで寝乱れた夜具を畳み込
もうとするかのよう。
すぐ目の前の海面から龍が首を出した。口から飛魚を滴らせている。トキエを飲み込み
そうな赤い大きな口を開き、キ〜〜ンと鳴いた。
トキエは、たじろぎ。思い出した。セックスを約束させられた事を。ゴム着きの本番っ
て条件で。相手も判らないのに。何故断れなかったのだろうか。洗脳されたに違いない。
きっとそうよ。私は、そんなふしだらな女じゃない。
鎌首を擡げた龍が、トキエを見下ろすと、ニタリと笑うような表情を見せた。金色の大
きな眼がキラリと光彩を放った。