テーマパークの虜達 【23】
★
瞼を開いた。まだ夢の中みたい。うげっ。なんだこりゃ。動物の顔！それとも。あっ指
がいっぱい。人の手だ。しかも女達の！マニキュアに囲まれて、魚の口みたいのがひくひ
くしてる。もじゃもじゃした毛らしき塊の向こう側に何か見える。鼻の穴。そしてあごの
裏。手術でもしてるの？あっ！
やっと気付いたレナは顔を赤らめた。女性自身のクローズアップだ。指がビラビラに食
い込みあそこが引き裂かれそうに見える。あたりがこすれて赤く充血し、何やら濡れて、
テカテカひかってる。気持ち悪い。同性の恥ずかしい部分のクローズアップを見てレナは
そう思った。ピンク色の粘膜。色づいた奥への入口。あんなにされて痛くないのかしら。
自分がされたらどうだろうか。ふと思うと、股間の奥がドキンと疼いた。そんな自分の反
応を恥ずかしく想う。
まだ、体は金縛りにあったように動かないけれど、これは夢の続きじゃないことが判る。
入眠幻覚みたいだけれど、そうじゃない。あれっ！調印室？ レナはお眠りする前の出来
事を思いだし始めた。椅子に座り、壁の戦略ディスプレーに映る映像を見てるんだ。だと
すると何でこんなものが映ってるんだろ！
大股開きで便座にでも座らされてるんだろーか？それにしては大きすぎる。下から見る
と下半身が大きく見えておばさんっぽく見えるけど、肌の艶やお尻の張り具合から、それ
が自分位の世代の女だと気付いた。どこか冷静な自分が可笑しい。剥き出しのおまん◯の
横に引き寄せられたレオタードの股が見えた。そして、驚くべきインスピレーションが閃
いた。まさかアリエス？
腰の脇から伸びる一人の女の指が、アリエス？のチョウチョのように開かれたおまん◯
に突っ込まれ。鉤状に曲げたその指は彼女の下腹部を天に引き上げるかのようなリズミカ
ルな抽送を繰り返していた。ジョイスティックの引き金を連射するようなリズム。クチュ
クチュ言う音。ピクンピクン反応するアリエス？の全身。自らのオナニーのリズムを想い
浮かべた。レナは同性のエクスタシーへの階梯にシンパシーを感じ始める自分の体に気付
く。アリエス？の膣からクリープのようなものが零れ、会陰を流れた。女達の指先が情け
容赦なく尻の肉を左右に開く。自分もそうなのだろーけど、お世辞にも綺麗とは言えない
周りと色の違う窪み。左右から引っ張られ、いびつに皺を寄せる。おぼれそうにアップア
ップひくつく惨めな肛門に、恥ずかしい分泌液は辿りついた。本人がこれを見たら自殺す
るんじゃないかしら。私なら絶対見せたくない。画面の同性に同情する反面。自分が少し
気を惹かれだしたマサトの女＝アリエスの全てを見た気になったレナは、微かな優越感の
ようなものを感じた。これが何時もマサトと睦み合っている女の体と性なんだ。自分の残
酷な一面に驚くと同時に、マサトとアリエスのセックスライフに想いを寄せると、明らか
にヤキモチみたいな感情も湧き起こった。心と体が、抱かれたいような、自ら慰めたいよ
うなコンディションにある。
足の指先がピクリと動いた。一瞬、夢の世界に戻った様な感覚。巨大な鷲に掴まれてい
た体が解放され、落下するような幻。落ちてる！！
わーーーっと、叫び声をあげようとして、全身がビクンと来た。ガシンっと言う、椅子
の震える音が聞こえた。
再び瞼を開くと、やはり同じ部屋だった。でもさっきの映像は、スクリーンセーバーで
でもあったかのようにスッと消え。CGの地球儀のような見なれた戦略宇宙図が現れた。
それにしても何時の間に、眠ったのかしら？サラ達との会談が、何時終わったのかも思い
出せない。ぼんやりとした意識が晴れ、在ることに気付いた。レナを悩ましていたパメラ
達の黒い船団はもう見当たらなかった。自らの理由で一時撤退したのか？それともサラが
追払ってくれたのだろーか。やれやれだわ！！やっぱりさっきまでのは夢だったんだ！！
それは甘い観測だった。額に手をやろうとして、両手の自由が利かないのに気付いた。
レナは目の前に写し出されていた映像が、自分に危険を告げていたことを知った。
しかしいずれにしてもおそかった。手足の自由はとっくに奪われていた。
「ねえ、サラ・・・・・」
居るか居ないか判らない相手に呼びかける。
いつからそこに居たのか、背後で人の気配がした。
部屋の空気が動く。
「ねえ！！誰？」部屋にどんな悪魔が潜んでいるのかレナはそこしれない恐怖を感じた。
「もう、覚めた？」
まるで、レナの覚醒状態をモニターしてたようなセリフ。サラの声のように思える。
「これ、どう言うこと。動けないの！助けて」
両手だけでなく、両足もベルトのようなもので椅子の各部に固定されていた。と言うか
そう言う椅子だったようだ。レナは、体を揺すり、少しでも背後を振り向こうとした。
視界の端に、黒い姿が見える。ラバースーツ？
驚き、無理な姿勢で相手を見上げた。
黒いゴーグルがこちらを見下ろす。ベリーショートの黒髪！それに紛れる黒いヘッドセ
ットとコード類をレナは見つけた。無表情の口元と輪郭には、サラの面影が。さっきの映
像が夢だったのか本当だったのかを確かめたかった。だけど、これから自分の身に降りか
かるかも知れない未来を想像すると怖くて聞けない。だからとりあえずの質問が口から出
た。
「あなたは敵なの？」
「敵とか味方とかはこの際関係ないわ。あなたが気持ち良くなるか、ならないかの問題よ」
悪い予感が確信に変わる。まるで、レナの心の音であるかのように、ガチャリと音がし、
自分の両手が左右に開いた。
サラと食事しながら、自分の座る椅子が変形ロボットの様だなと感じた事を、今になっ
て思い出した。またガチャリと音がし、両手が万歳させられるかのように、吊り下げられ
る格好になった。
「酷いわ。変なことは止めて、ねえ」
サラ？が目の前に来た。胸座に手を差し出した。レナは脅されるのだと思い、顎を引い
て怯んだ。予想に反し、サラは、レナの着るデニムシャツの白いシェルボタン型のホック
に手をかけた。懸けられたニ番目のボタンから下に向かって、一つずつ外して行く。
「大人しく、言うことを聞いてなさい」
サラは母親の様に偉そうにそう言った。
「いやよ！」レナはぴしゃりと言いやった。
サラの左手の親指が、無断でレナの下腹部に押さえつけられ、不本意にレナの性感が反
応した。あん！と声をあげそうなレナをよそに、最後のホックが外される。淡い紺のシャ
ツの裾を掴み、左右に引き上げながら、サラがレナに覆い被さって来た。ゴーグルの奥に
潜む相手の目を覗いながら、レナは、内緒事を囁くかのような小さな声で訪ねた。
「やっぱりあなたパメラの仲間？」
彼女の息が頬に感じられる程すぐ近くでサラが言う。
「私に応える義務はないわ？」
両手をレナの背に差し込むと、シャツの背全体を、抱く様に掴んだ。そして、耳元で囁
く。「あなた捕虜なのよ」
レナにはサラが、心の中で、ふふふと笑った様に想えた。
小児科で為すすべもなく上着を肌蹴させられる幼い少女のように無抵抗を余儀なくされ
るレナ。ホワイトジーンズのウェストに絞られた柔らかい腹部の真中で、裸にされ行く恐
怖を感じ、可愛い臍が怯えていた。
シャツが上に擦り上げられ、彼女のストラップレスの黒いブラと鳩尾から下の肌が露に
なった。若若しい女のむっとした色気が発散される。
「抵抗するなら、あなたがこんな目に会っている姿をパブリックチャンネルに流すわよ？
アリエスみたいに」
レナは、サラの恐ろしいセリフに泣きそうになった。
ジェットコースターの急降下地点に差し掛かった幼い子供のように声が出ない。
そんなレナを見て、サラは言い聞かせる様に言った。
「今は、プライドやゲームは関係ないの。あなたが気持ち良くなるか、ならないかの問題
なの」
汗ばんだシャツは、万歳した手首の所まで引き上げられ、そこでタオルのように丸めら
れた。原初的な惨めさを、レナは久し振りに感じた。